一人で独立して開業したいと思った時に考えるべき事(保険・年金編)
治療院でも美容室でもある程度経験を積んで行きますと、
「独立して今以上にもっといっぱい稼ぎたい!」
「自分のお店を持って自分の考えがどれだけ通用するか試してみたい」
「職場の環境にとらわれず、自分のペースで仕事をしていきたい」
「もともと将来は独立したいと思っていた」
と言うような動機から独立開業を目指す方がきっと多いんじゃないでしょうか。独立開業したいと思った時に、実は一番注意していただきたい項目があります。
それは自分の「保険」と「年金」です。
ご存知の方も、そうでない方も、チェックしていただければと思います。
サラリーマンでも美容室や治療院でも企業(事業元)で働いていれば、健康保険に加入していると思います。ご存知の通り保険料の自己負担は3割です。
これが退職した翌日で健康保険の機能は喪失します。ですから辞める際には医療保険の手続きをすぐにしないといけません。
(そうしないと万が一病院にかかった場合の医療費は全額自己負担になるからです)
つまり国民健康保険にするか、今まで加入していた健康保険の任意継続のどちらかを選択することになります。
簡単なポイントとして、国民健康保険は退職した日から14日以内に離職票・退職証明書など退職した事がわかる書類を持って住んでいる市区町村役場の国民健康保険窓口へ相談しに行きましょう。
もう一つの方法としては任意継続です。会社を辞めても今まで入っていた健康保険に加入するものですがいくつか条件はあります。
- 退職後の翌日(資格喪失日)から20日以内に手続きしなくてはいけません。
- 1日でも遅れますと加入はできません。任意継続の加入期間は2年です。
任意継続の一番の注意ポイントは任意継続期間中、1日でも保険料の納付が遅れると強制的に脱退させられる事です。
そして国民保険に加入するか任意継続で加入するかどちらの方が得なのか?と言う話はよく出ます。一般的に言われているのは任意継続の方です。ただ各市町村のお住いの住所やこれまでの収入によって保険料の金額は変わりますので、一概にどちらが安いとは言えません。
また、任意継続を選ぶ場合でも今まで払っていた保険料の倍になるという事です。今までは会社が半分負担していましたから、それを全額自分で払う形になります。特に最初の振込だけは保険料の2ヵ月分納めなくてはいけません。
(通常の更に倍になるので負担が大きくなります)
例:健康保険料が月ベース14,000円の場合、任意継続を選択した時の支払い
14,000×2=28,000円(1ヶ月の自己負担額)
28,000円×2(2ヶ月分)=56,000円(初回振込額)
つまり初回の支払いは56,000円を用意しなくてはなりません。
※ご自分の健康保険料が月にどのくらい支払われているかをチェックしましょう。
それでも国民健康保険より安いという判断で任意継続を選ばれるなら上記の事を注意して手続きを行ってください。また、任意継続を選択した場合「保険証」が変わるので使っていたものは一度返却してから手続きとなるので、事前に職場に手続きを依頼しておくのがベストです。
そして国民保険か任意継続の選択する場合、決定的な大きな違いがあります。
それは「扶養の考え方」です。
そもそも国保には「扶養」という概念がありません。家族それぞれが被保険者となりますので、別々に保険税が掛かります。それとは違い任意継続は条件さえ満たせば、扶養家族として保険証が追加され追加の保険料も掛かりません。家族が多い方なら一旦は任意継続が良いという判断でもOKだと思います。
また、国保に入ってしまうと任意継続への切り替えができません。でも任意継続から国保へは変更が可能ですのでしっかり覚えていた方がいいでしょう。
独立した場合は当たり前ですが雇用保険に加入もできません。ですからデメリットがある事を踏まえた上で将来に対する対策が必要になります。
基本的には事業主になれば労災や雇用保険には加入できません。しかしながら、現在では民間での事業主向けの労災保険があります。万が一、自分の身に何か起こっても大丈夫なように対策をしていた方が安心できます。
年金に関しては今までどこかに属していれば「厚生年金」に加入しています。独立した際は国民年金のみになります。
(前提として20歳以上60歳未満は国民年金に加入していなければなりません)
その際に退職した方は国民年金の被保険者の変更をしなければなりません。
退職した際には退職日の翌日から14日以内に各市町村役場に国民年金に加入する際に「種別変更届」を提出し「第2号被保険者」から「第1号被保険者」に変更する手続きが必要です。配偶者がいる場合でも手続きは行わなければなりません。
今までと大きく違うのが事業主のもとで働いていた時は「国民年金」と「厚生年金」とダブルで加入していたわけですが、独立するとなると将来もらえる年金としては厚生年金で払っていた年数分と独立した時点からは「国民年金」分しかもらえなくなります。
これは将来的な面で不安がありますので、「国民年金基金」や「個人年金保険型」などのサービスを利用して「厚生年金分の補てん」をしておいた方が良いと思います。
※個人年金保険型に関しては各保険会社のHPをご覧ください。
今回のポイントは以下になります。
【保険】
- 退職した際は「国民健康保険」か「任意継続」のどちらか選択。
- 任意継続は一般的には安いが、1日でも納付が遅れると強制脱退。
- 国保から任意継続への変更はNGだが、任意継続から国保への変更はOK。
- 国保が良いか任意継続が良いかは、住まいの市町村や収入にによって違うので、どちらが良いとは言えないので相談をする。
- 任意継続を選択した場合、支払額が今の2倍。さらに初回は2ヶ月分納める。
- 独立したら労災や雇用保険には加入できない。
【年金】
- 厚生年金に加入していたなら退職後は国民年金だけ。
- 国民年金だけはせめて払って行く。
- 余裕ができたら将来に向けて厚生年金の不足分を「国民年金基金」や「個人年金保険型」で補てんする。
独立をしようと思った時に開業する事ばかりに気がいってしまい、ついつい自分の事は後回しになりがちです。そして自己負担を少なくしたいがために、保険に入らず年金も支払わない場合が多いと聞きます。
入らないまま年月が過ぎてしまうと後で大変なしっぺ返しが来ます。ですから独立開業しようと思った時には忘れがちな保険や年金の事も考慮に入れていただいた方が得策です。